アドリアン・ユストゥス(ヴァイオリン)
メキシコ市生まれ。幼少より音楽的環境に恵まれた家庭に育ち11歳でAcademia Yuriko Kuronuma に入り、黒沼ユリ子に師事。1985年「日本メキシコ友好コンサート」で初訪日。この時日本で受けた暖かい拍手で音楽が持つ不思議な力を実体験し、将来への道を心に決めたという。メキシコの全国ヴァイオリン・コンクール優勝、オーケストラとの共演デビューをしてからロチェスター大学の Eastman School of Music に入り、Prof. Zvi Zeitlin に師事。特別奨学金を受け栄誉賞付で学位を取得。その後、ManhattanSchool of Music で Pinchas Zukerman のもとでも研鑽を積んだ。国際ヘンリック・シェリング・コンクールで金賞、メキシコのモーツアルト・メダル受章、ニューヨークの国際アーティスト・コンペティション賞なども受賞。カーネギー・ホール、ウイグモアホール、バービカン・センター、サントリーホール、テルアヴィヴのアート・ミュージアム、メキシコの国立芸術宮殿、プラハ城のスペイン宮殿など国際舞台に立ち、各地で高評を得る。ロンドンのフィルハーモニア・オーケストラとシベリウスの協奏曲、メキシコのケレタロ・フィルハーモニーとエンリッケスの協奏曲第1番、アメリカの現代室内楽アルバム「タペストリー」などがすでにリリーズされていたが、日本での2011年リサイタルからのライブ「ラ・カンパネラ」と2012年リサイタルからのライブ「パガニーニ・24のカプリス」も絶賛され、好評発売中。楽器は1744年製グアルネリ デル ジェス “Lord Coke”を使用。
渡辺 美穂(ピアノ)
千葉県千葉市生まれ
武蔵野音楽大学及び大学院を経てリスト音楽院(ハンガリー)へ留学。1999 年帰国後「渡辺美穂ピアノリサイタルシリーズ」にて室内楽の演奏会を続けて行っている。草津夏季国際音楽祭にてオルガニスト・音楽学者である C・ブリツィ氏のアシスタントを務めレッスンや講義を数多く通訳、帰国後幅広い視野で音楽を学ぶ。最近ではベートーヴェンのピアノコンチェルトをピアノとオルガン版で同氏と共演。聖徳大学講師。2018年よりラビドールホール、千葉、福島、京都で黒沼ユリ子氏と共演。その後2023年アドリアン・ユストゥスと初共演となり、名コンビと絶賛され、東京、千葉で昨年と今回、再度の共演が実現した。
ヴァイオリンで語るヴィルトゥオーゾ、アドリアン・ユストゥス
黒沼 ユリ子
ある時、私がアドリアン・ユストゥスのことを「歌うヴィルトゥオーゾです」と紹介したところ「彼は声楽家でもあるのですか?」と訊かれて返事に窮したことがありました。が今になって思えば、それは正解でもあったのです。何故なら彼は、まるでオペラ歌手の様に、人生の喜怒哀楽をヴァイオリンで語り、歌う演奏家なのですから。
プラシド・ドミンゴ、ラモン・バルガス、ロランド・ビヤソン、ハビエル・カマレーナとは、メキシコが世界の楽壇に送り込んだ超有名なテノール歌手たちの名前だと即答できるオペラ・ファンは、日本にも少なくないでしょうが、ユストゥスは彼らと並びメキシコが誇る「語り・歌うヴァイオリニスト」なのです。パガニーニの「カプリス24曲」による彼のリサイタルの後には、次のような感想も届きました。
★何という瑞々しくも豊かに息づく音楽であろうか。歌うことが楽しくてしょうがない、そして聴衆全員にこの作品の魅力を共有しようではないかという様な熱い語りかけ。これまで聴いてきた多くのヴァイオリニストが小さく見えてしまうようなスケールの大きさ。
有名な 13 番の語りの巧みさは、ユストゥス自身がパガニーニになりきり語りかけている様な生々しさがあった★少年時代に日本の聴衆から受けた熱烈な拍手の音が忘れられず「ヴァイオリニストとして生きるスイッチは日本でONにした」と言い切るユストゥス。超絶技巧を決して飾らずに駆使しながらのユストゥスの自然体な演奏によって、「一人でも多くの聴衆が、音楽と共に生きることの幸せを実感できたら」と彼は願っています。それは彼が「神から授けられた使命」と信じているからなのです。近年はメキシコ国立コンセルバトーリオの教授として、若い世代のヴァイオリニストの指導にも当たりながら、内外の交響楽団の独奏者として大活躍中。